シマフクロウってどんなフクロウ?

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フクロウ情報

みなさんは、シマフクロウを知っていますか?シマフクロウは北海道周辺に住む日本固有のフクロウです。今回は、シマフクロウの生態や現状についてまとめました。

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名前

和名:シマフクロウ(島梟):「島」は北海道を指している
英名:BLAKISTON’S FISH OWL
学名:Bubo blakistoni / Ketupa blakistoni(日本鳥類目録)

英名と学名に入っている「ブラキストン」という単語は、イギリス出身の動物学者トーマス・ブラキストンが由来です。

大きさ

全長60〜70cm程度で、人間の2歳児くらいの大きさです。
世界で2番目に大きなフクロウです。1番大きなフクロウは、ユーラシアワシミミズクです。

体重

一般的に、フクロウはオスよりメスの方が体格が良いです。体重は、雄のシマフクロウが3〜3.5kg、雌のシマフクロウが3.5kg〜4.5kgです。

顔の特徴

  • 顔盤は黄褐色で、黒色の細い筋状の縦縞が入っている
  • 顔周りの縁取りは見えづらい
  • 羽角はボサボサとしており、水平方向に傾いている
  • 目はレモン色
  • くちばしは灰色

体の特徴

  • 体の大きさは世界で2番目に大きい(全長:66g前後 体重:4,000g前後)
  • 体の上部は茶色
  • 体の下部は淡い黄褐色で、淡い褐色の細い波型模様が入っている
  • 体の上部と下部のどちらにも黒褐色の筋状の縦縞が入っている
  • 羽は茶色で、くすみ黄色の横縞が入っている
  • 風切羽根は縁がギザギザしていない
  • ふ蹠はクリーム色の羽毛に覆われている
  • あしゆびは羽毛が生えておらず、鉛色〜灰色
  • 爪は濃い象牙色
こきんめ
こきんめ

水中の魚を獲るので、飛ぶ音を消す必要がなく、風切羽根の縁はギザギザしていない!

こきんめ
こきんめ

趾に羽毛が生えていないのは、獲った魚を滑って落とさないため!

鳴き声

シマフクロウ(1)鳴く(芽登温泉) – Blakiston's fish owl – Wild Bird – 野鳥 動画図鑑

引用:野鳥動画図鑑 – Wild Bird Japan

動画の2羽はつがいでしょうか。片方のシマフクロウが「フーフー」と鳴くともう一方が低い声で「ヴォー」と答えているように聞こえます。

オスのシマフクロウは「ヴォーヴォー」、メスのシマフクロウは「ヴォーォ」と鳴くと言われています。性別で鳴き方の強弱がわかりやすい種類です。
この動画では先にオスが鳴きその後にメスが鳴いているのでしょうか?

ちなみに、フクロウの鳴き声でイメージしやすいのは「ホーホー」「フーフー」のようなくぐもった声ですが、中型以上のフクロウに多い気がします(シマフクロウ含め)
小型さんは甲高い声で鳴くことが多いです。

例えば、小型フクロウのコキンメフクロウは「ギャーギャー」「キャンキャン」と鳴きます

餌 

川魚(サケ科)、甲殻類を食べます。冬場、川が氷結している時はネズミなどの小型哺乳類や飛来しているカモを食べます。雪が溶けて河畔に水が溜まると、産卵のために両生類(エゾアカガエル、サンショウウオ)が集まるので狙います。

生息地

かつて、トルコ〜マレー半島に生息していたミナミシマフクロウを除きます

アジア北東部(ロシア東部〜北海道)に分布しています。

前述のブラキストンは日本の野鳥の分布を調べ、津軽海峡に大きな境界線があることを提唱しました。これをブラキストン線と言います。シマフクロウはこの線を南限として生息しています。

川沿いの広葉樹林や低地の岩場に生息しています。ロシアでは広葉樹と針葉樹が混在している森に生息しています。

北海道に多く生育している広葉樹は、「ミズナラ」「ニレ」「シナノキ」「カツラ」「ダケカンバ」などです。
広葉樹にはうろ(樹洞)という、長い経年を経た太い幹がある樹木に見られる樹皮が剥がれて内部が腐ったりキツツキ類が巣穴を掘って出来た穴が存在します。シマフクロウはその穴に営巣します。

一年を通して決まった縄張りの中で生息する留鳥です。

繁殖

2月ごろ…営巣、交尾
3月初旬から中旬ごろ…大木の樹洞に1個か2個産卵
4月中旬ごろ…産卵から35日ほど経つと卵が孵る
5月下旬から6月中旬ごろ…孵化後、50日ほど経つころに巣立つ

一年を通してつがいでテリトリーを作ってるので求愛給餌の重要性は低いです。

コキンメ
コキンメ

求愛給餌とは、オスがつがいになりたいメスに餌を与えることです。
餌を与えることで、狩りの能力をアピールしたり絆を高めたりする効果があります。
求愛給餌がうまく行った雌雄のフクロウはつがいとなり繁殖へと進みます。

寿命

一般的に大型種のフクロウは30〜40年ほど生きると言われています。
シマフクロウは30年ほどの寿命です。

値段

不明(販売不可)

シマフクロウの画像はどこで見られる?

 フォトAC

フォトACは高品質な写真が無料でダウンロード出来るサイトです。
日本語で検索出来るので検索性が良いですね。写真は加工や商用利用出来るのでブログのアイキャッチなどに使用も出来ます。

写真素材素材【写真AC】

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世界中の無料写真素材の中から探すことができます。
日本語検索も出来ますが、シマフクロウは英名で検索した方が写真がよく見つかりました。

現状

国の天然記念物、日本版レッドデータブックで絶滅危惧種IAランクに指定されています。絶滅危惧種IAランクは最も危機的ランクが高いことを表しています。
シマフクロウは25年間で約2倍となり現在北海道内に約160羽が生息しておりますが、まだ絶滅の危機から脱してはいません。

 なぜ絶滅の危機に瀕している?

  • 餌となる生物が、河口部で川魚が捕獲されている他、川にダムが出来たりコンクリートで埋められたりした影響で数が減ったため
  • 広葉樹が伐採され、植林された針葉樹が増加したため
  • 生息地へ人間が入り込むと、繁殖の邪魔になったり外敵が近寄ってくるため
  • 交通事故や感電事故などで怪我を負ってしまうため

対策

 森林の保護・植林

  • 自然林:森林の維持のための伐採を除き、原則として伐採を行わない。
  • 人工林:マツなどの植林された針葉樹の間伐を行い広葉樹を植える。その後も定期的に間引いて健康な森林状況を保つ。

シマフクロウは日中は外敵から身を隠すために生い茂る葉の中に潜んでいるが、広葉樹は冬季に葉を落とすため隠れる場所が少なくなっている。常緑の針葉樹をある程度残すことは、シマフクロウの休息地を確保するために必要です。

 巣箱の設置

樹洞の代わりに設置された巣箱は繁殖期に使われます。雌が巣箱の中で卵を温め、産卵後は子育てをする場所となっています。
巣箱は体の大きなシマフクロウが入る大きさ(70cm程度)で、ドラム缶に窓がついたような形になっています。

大きく重たい巣箱を樹木まで運び、高いところに設置するのは人間の手で行われており、大変な重労働となっています。

 餌の確保

シマフクロウが孵化して巣立つまでに、親フクロウは30kgほどの餌を子供フクロウに食べさせます。その餌の大部分が人工池で生息している魚です。

シマフクロウの餌となる生物の生息環境に影響を及ぼさないように、森林の中に池を作ります。
人工池は比較的小規模で、周辺に縄張りを形成する個体が利用します。
人工池の中に量りが設置されており、シマフクロウの体重を測ることが出来るようになっています。

シマフクロウの狩りは夜に行われます。日中に餌となる魚が他の鳥(オジロワシなど)に捕られないように、池にマットなどを浮かべておきます。魚は日中はマットの影に隠れ、夜になるとマットから出てくるのでシマフクロウが捕ることができます。

 生息地への人間の入り込み制限

バードウオッチングや撮影目的でシマフクロウの生息地に近づく人間が増えています。
元々は、シマフクロウは人間の生活圏内の近くに住みアイヌの人々からは「森の守り神(コタン・コル・カムイ)」と崇められてきました。
しかし、生息地となる森の開発が進んだり保全環境に上記の理由から人間が近づくことにより、人間が必要以上にシマフクロウと距離感が近くなってしまいました。

シマフクロウの生息地を非公開にしたり立ち入り禁止にしたりすることで、人間の存在を感じずに安心して生活出来る様にしています。

 事故対策

怪我をしたシマフクロウを保護し、怪我の原因を調べます。対策をすることで、シマフクロウが事故に遭う確率を減らします。前述の人間の入り込み制限は、交通事故などの発生を防ぐ役割も果たしています。

保護団体の活動

 テレビ番組「ポツンと一軒家」

テレビ番組「ポツンと一軒家」で北海道でシマフクロウの保護活動を行なっている菅野さん夫婦の様子が紹介されました。
高床式の建物に住むシマフクロウの様子を観察したり、水源林の復活のための調査を行なったりしているそうです。

この番組が放送された1年後に「あのポツンと一軒家は今」と題して菅野さんが再取材されました。
コロナ禍で、シマフクロウが住む森に立ち入る人間が減ったのが幸いしてか、シマフクロウの繁殖が成功したとのことでした。

シマフクロウ・エイド

ポツンと一軒家で取材された菅野さんはNPO法人シマフクロウ・エイドの代表をされています。

シマフクロウ・エイドは、一般の皆さまからの寄付や民間の助成金によって、重要である‘合間の’調査や民有地などにおける生息地パトロールを実施しています。寄付の募集をつうじて、シマフクロウの現状を皆さまに伝え、彼らが安定して暮らせる環境保全への理解や関心を推進しています。この活動を支えていく継続したご支援をお願いいたします。

NPO法人シマフクロウ・エイド

シマフクロウの保護活動は国や研究者などが長年行ってきましたが、様々な非営利法人もシマフクロウの保護活動をされています。その財源は寄付や助成金で賄われています。

シマフクロウ・エイドでは「守りたい寄付(調査やパトロール活動を応援したい)」「森づくり寄付(人もシマフクロウも喜ぶ森づくりを応援したい)」「おさかな寄付(シマフクロウにお魚をプレゼントしたい)」「ささえたい寄付(シマフクロウ・エイドを応援したい)」の数種類から選んで寄付をすることが出来ます。1000円から寄付することができ、寄付者の名前が会報に掲載されます。

私も寄付してみましたが、クレジットカード決済で気軽に寄付することが出来ました。毎年、年間の目標金額が出ており、寄付金の使い道が明示されているので気になった方はぜひ寄付ページを見てみてください。

シマフクロウのためにできること

シマフクロウが生きていく環境を作るために、私たち人間が出来ることは何があるのでしょうか。

前述のように、保護団体に寄付をすることは手軽に出来ることの1つです。生き物を取り巻く環境を保護し育てていくことはとてもデリケートで専門家の高度な知識が必要となります。ノウハウも多く必要となるでしょう。保護活動を第一線で行っている方々が活動を継続していくためには、やはり金銭的な援助が必要となります。

 シマフクロウとSDGs

昨今、SDGs(持続可能な開発目標)の推進が言われています。このSDGsとシマフクロウの保護活動はリンクする箇所があります。

SDGs6 安全な水とトイレを世界中に

この目標の中に森林・河川などの水に関連する地域の生態系の保全回復に繋がる取り組みが入っています。シマフクロウや共生している動物の保護はまさしくこの取り組みとリンクしています。

水域の生態系を守るということは、水質や水量、水辺池の保全に繋がります。生態系が守られていれば、水を汚す生物(寄生虫など)が減り、水を綺麗にする生物を保護することが出来るのです。

SDGs14 海の豊かさを守ろう

私たちの食と強い関わりのある海。水産業全体を支えるのは「植物性プランクトン」と言われています。植物性プランクトンは、海の生物の餌となっています。

海藻や植物性プランクトンは、鉄分やミネラルを栄養としています。植物性プランクトンが鉄分やミネラルをうまく吸収するために必要となるのが「フラボ酸鉄」という成分です。

このフラボ酸鉄は、広葉樹の枯れ葉が溜まってできた腐葉土が出来るプロセスで作られます。

広葉樹から枯れ葉が落ちて蓄積されると、地中の微生物によって少しずつ分解されていきます。
そして、地中の細かい粒土の鉱物と混ざり合い腐葉土となります。
このプロセスでフラボ酸と鉄が結合し、フラボ酸鉄が作られます。

腐葉土に雨水が浸透し、フラボ酸鉄が豊富に含まれる水分が川、そして海へと流れ出していきます。

こうして植物性プランクトンが生育され、ひいては海の生物が生育されていきます。
シマフクロウの営巣に使われる広葉樹を育てることは、豊かな海を守ることにも繋がるのです。

SDGs15 陸の豊かさも守ろう

陸の生態系を守り持続可能な方法で利用したり、砂漠化を防ぎ森林破壊や土地の劣化を防いで再生させることを目指します。
絶滅危惧種を保護し生物の多様性を維持することもこの目標に含まれており、シマフクロウの絶滅を阻止する活動は他の関連する生物の存続に繋がるのです。

北海道に生息する他のフクロウ

 エゾフクロウ

エゾフクロウ(雛)
エゾフクロウ(成鳥)

北海道にはシマフクロウの他にエゾフクロウが生息しています。
エゾフクロウは、ウラル山脈〜ロシア東部に生息するウラルフクロウ(和名:フクロウ)の亜種であり比較的茶色みが強い個体となっています。

日本にはエゾフクロウの他に、本州西部〜九州に生息するキュウシュウフクロウと本州北部〜中部に生息するフクロウが生息しています。

 シロフクロウ

北極圏に生息している種類のフクロウです。冬になると、ユーラシア大陸や北米大陸の寒い地域に南下し越冬する個体が多く、稀に北海道でも見られることがあります。

フクロウの中でも、雄雌の判別がしやすい種類として有名です。

関連グッズ

 ペーパークラフト

ヤマハ発動機株式会社さんの企業サイトでシマフクロウのペーパークラフトのデータが配布されています。
頭の形やキリッとした目がよく再現されていますね。作り方を見ると、工程が多くないのでお子様と一緒に作ってみてもいいですね!

 世界のフクロウ全種図鑑

シマフクロウの特徴や生態などについて細かく知りたい方におすすめの本です。
写真も多く、眺めるだけでも楽しいです!

今回はシマフクロウの生態や現状をお伝えしました。かっこよさも可愛らしさも併せ持つシマフクロウ。絶滅の危機に瀕していますが、いなくなってしまうのは絶対に避けたいですね。
シマフクロウが生息しやすい環境を作り出すには人間の力が不可欠です。シマフクロウや取り巻く環境に興味を持ち、シマフクロウが永く生息していけるように手助け出来たらいいですね。

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